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スコットランドのボトラー『ウィームス』セミナーレポート

先日スコットランドのボトラー「ウィームス」のセミナーが行われ、創業者であるウィリアム・ウィームス氏よりお話がありました。

オーナーのウィームス家はエディンバラ郊外にあるウィームス城の城主で、600年以上続く名家です。長きに渡り、ワイン商として活動してきました。ウイスキー事業との関わりは19世紀にジョンヘイグが同家の敷地内に蒸溜所に建てたことにはじまり、現在もディアジオ社キャメロンブリッジ工場は敷地内にあります。また所有する畑でモルトやグレーンを生産し、ディアジオやペルノー・リカールなどに供給しています。

2005年からインデペンデントボトラーとしてウイスキー事業に参入し、シングルカスクのほか、ワインのブレンド技術をベースにブレンデッドウイスキーを販売。コンサルタントとしてチャールズ・マクリーンを招聘しています。以前は熟成されたモルトのみを購入していましたが、2010年からニューポットも購入し自前の樽(スペイサイドクーパレッジにて調達)で熟成をコントロールしています。

その理由としては、

・ボトラーズとして長期的に活動できる
・樽の品質管理が可能(従来、樽の履歴や品質は不明なことが多かったため)
・テイスティングサンプルが入手できなくなってきている。とりあえず購入しなければならないことが多く、そのうえ20樽程度などのだき合わせが多い

など。

特に、だき合わせによるまとめ買いでは、シングルモルトとして使えるのは5%程度しかなく、多くはブレンデッドとして使うが、リラック(樽交換)が必要なものや売却しなくてはならないものも含まれているため、厳しいとのことです。

現在、ウィームス社の主軸製品は3種類のブレンデッドモルトです。「ハイブTHE HIVE」「スパイスキングSPICE KING」「ピートチムニーPEAT CHIMNEY」がそれで、いずれもアルコール度数46%でリリースされています。「ハイブ」は、ハチミツ様の甘さを強調しており、10種類程度のバーボン樽で熟成したスペイサイドモルトをブレンドしているそうです。

「スパイスキング」は重厚なタイプで、文字通りスパイスが効いているかのような印象を受けるとのこと。「ピートチムニー」は、優しいピート感(12ppm程度)を感じます。

ここで、各ウイスキーのシグネチャー・モルト(メインに使用するモルトのこと)を選ぶにあたって、製造工程の特徴と香味の関係を踏まえているという説明がありました。つまり蒸溜所の製造スペックデータより、蒸溜所の香味の個性を推察しているそうです。

「ハイブ」では甘さが強く出てくる工程、つまり発酵時間や蒸溜時間が長い蒸溜所のウイスキーを選定。「スパイスキング」はヘビータイプということなので蒸溜時間が短く、さらにコンデンサーがワームタブの蒸溜所のウイスキーを選んでいるとのことでした。ニューポットの時点で硫黄が感じられるものをバーボン樽で熟成させると、よりスパイシーなフレーバーが生じるからだとか。

「ピートチムニー」はピートの効いたものをキーモルトとして30%以上使用すること、ノンピートのものをベースモルトとして50%使用、残り20%はアクセントになるように決めていくスタイルをとっているそうです。

シングルモルトについても多くリリースしていますが、こちらも基本的にアルコール度数46%でボトリングしています。ただ、コンサルタントのチャールズ・マクリーンの強い意向があった場合は、カスクストレングスでボトリングすることも。

またウィームス社のユニークなところとして、テイストの特徴を簡単なキャッチコピーでラベルに記載していることが挙げられます。今回テイスティングしたLINKWOODは「Summer Breeze(真夏のそよ風)」、BUNNAHABHAINは「Lemon Buttered Kippers(にしんの燻製・レモンバター添え)」と記されていました。

最後に、2015年に稼働した新しい蒸溜所、キングスバーンKINGSBARNS蒸溜所についてです。名前は「王様の穀物倉庫」の意で、この周辺が王様の住んでいた土地であり、穀倉地帯だったことから命名されました。場所はエディンバラの北、セントアンドリュースの近くで、建物は250年前のものを使用しています。ローランド・スタイルを表現できるモルトウイスキー、ライト&フルーティを目指しているそうです。

全体の設計デザインはキルホーマン蒸溜所やカバラン蒸溜所を手掛けたジム・スワン氏によるもの。ノンピーテッド・モルトを使用し、発酵時間は長めの75~80時間、ポットスチルは2基あり、2回蒸留でミドルカットはやや早めにとっています(蒸溜時間4ℓ/秒)。ニューポットのアルコール度数は68~69%、加水をして63.5%で樽に入れています。使用する樽は今のところバーボン樽(ヘブンヒル)が80%、残りがピーテッドカスクやシェリー樽とのこと。

現段階でチャールズ・マクリーンのチェックは入っていないようですが、今後ボトリングに際してはコンサルタントを依頼する予定だそうです。ニューメイクをテイスティングしましたが、若い青草・麦芽・柑橘の皮のオイルなどの香り、味わいは全体にバランスよく複雑で心地よい印象でした。今後の熟成が楽しみですね。

 

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