登場カクテル「サンファンズ・ボレロ」「ラスト・ワード」
登場人物
【味香】広告代理店の営業だったが、バー好きが高じて酒場専門誌の編集に転職。以前に増して、いろいろなバーを巡るように。
【さとる】ビールが好きで、居酒屋やパブで飲むことが多い。味香と一緒に初めてバーへ行ってからは、バーにも通うようになる。味香の高校時代の同級生。
さとる)ベルギービールを豊富に取り扱っているバーは、珍しいですよね。いつも行っているパブにヒューガルデンとシメイブルーは置いてありますけど、ほかはほとんど見かけたことがないです。
増田輝仁さん(以下、増田)以前、お台場で地ビールを取り扱うお店のマネージャーをしていたことがありまして。ちょうど、地ビールがブームの頃でした。ここをオープンした1997年より前ですから、25年以上前になりますね。その時にベルギービールの輸入・販売をされている小西酒造さんと出会ったことがきっかけです。いま召し上がっている「ヴェデット」や、メニューにある「デュベル」「リーフマンス」「オルヴァル」は小西酒造さんが取り扱っている商品です。
さとる)この前は、こちらでデュベルを飲みました。
増田)美味しいですよね。アルコール度数が8.5%とやや高めなのに、それを感じさせないほどクリーミーで柔らかい香りがあって。世界一魔性を秘めたビール、とうたわれているんですよ。
味香)こんばんは。
河野亜由美さん(以下、河野)いらっしゃいませ。
味香)待ち合わせで……あ、カウンターにいました。
さとる)思ったより早かったね。
味香)うん、何を飲んでるの?
さとる)生ビール。<メニューを見せて>これだよ。
味香)ヴェデット・エクストラ、ホワイトビールなんだね。エビスも生がある。
さとる)あとはボトルでいろいろと。ベルギービールの種類が多いんだよ。
味香)さっき仕事でビールを飲んだから、カクテルにしようかな。「サンファンズ・ボレロ」って、聞いたことがないわ。
増田)ラムをベースにアプリコットブランデーとオレンジ・ジュース、レモン・ジュースを加えてシェイクしたフルーティなショートカクテルです。
味香)それをお願いします。さとる、何か食べる?
さとる)ビーフジャーキーにしようと思ってた。でも、ガーリックオムライスが人気なんだって。
味香)じゃあ、それぞれ頼んでシェアしようよ。私はガーリックオムライスをください。
増田)かしこまりました。
―増田さんがカクテルメイキング―
増田)カリブ海に浮かぶ島・プエルトリコの首都サンファンと、音楽のスタイルであるボレロの名が付いたカクテルです。
味香)なんだか陽気なイメージですね。
さとる)いま流れている音楽にも合ってるし。どこかで聞いたような気がするんだけど。
増田)「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」をご存知ですか?
さとる)映画ですよね? 一度だけ観たことがあります。
増田)もとは1997年にイブライム・フェレールがメインボーカルとして参加したアルバムの名前で、その録音の様子を記録したものがドキュメンタリー映画になったんです。流れているのは、そのCDです。
河野)マスターはイブライム・フェレールのファンで、そちらの壁にポスターが飾ってあるんですよ。
さとる)ちょっと見てもいいですか? ……サインがしてある!
増田)2000年の東京公演時に赤プリ(※)に宿泊されていたようで、食事でこのビルの2階にご来店されました。偶然イブライムらしき姿が見えたので、声を掛けたら本人で。当時は同じビルの地下でバーを営業していて「良かったら、食事の後に地下で僕のモヒートを飲んで頂けませんか」と言ったんです。そしたら降りてきて、モヒートを何杯もおかわりしてくださいました。このポスターも貼ってあったし、ファンだということが伝わったんでしょうね。
河野)フレームの上からサインをされているので、掃除する時にはそーっと拭いています。<ガーリックオムライスを差し出す>
味香)ケチャップとマヨネーズが綺麗にかかってる。
さとる)美味しそう。ヴェデットをもう1杯お願いします。
味香)私は「ラスト・ワード」を。
―河野さんがカクテルメイキング―
味香)これ、この前カクテルブックで見つけたの。禁酒法時代に生まれたカクテルなんだって。
さとる)あの悪名高い法律ね。何年くらい続いたんでしたっけ?
河野)1920年から33年までの約13年間です。禁酒法時代に創作されて、いまもスタンダードカクテルとして残っているものも多いですよ。アヴィエーションやブロンクス、オレンジ・ブロッサムなど。
味香)ラスト・ワードは「最後の乾杯」の意味らしいよ。
さとる)そんな時代は嫌だなぁ。最後の乾杯なんて言わず、もう1軒行こうよ。
味香)もちろんそのつもり。ここでは〆の一杯、という意味で頼んだんだ。
さとる)そういう意味で頼むのもいいね。俺も今度、カクテルブックを読んでみるよ。
※ 赤プリ
かつて営業していた「赤坂プリンスホテル」のこと。2007年に「グランドプリンスホテル赤坂」と改称され、2011年に閉館した。現在、跡地は東京ガーデンテラス紀尾井町として再開発され、「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」がオープンしている。
BAR DECE 増田輝仁さん
東京都港区赤坂3-10-1 第一対翠館ビル6F
03-3505-7891
※営業時間・定休日はSNSなどでご確認ください。
チャージ 500円(21時~)、サービス料 10%
席数 24
カクテル、ウイスキー、ワイン 各1,200円~、ビール 1,000円~(税込)
本日のお会計
サンファンズ・ボレロ 1,300円
ラスト・ワード 1,300円
ガーリックオムライス 1,300円
チャージ 500円
サービス料 10%
計 4,840円
※合計は税込価格です