登場カクテル「ヨクハマ・レッド・ブリック」「ライン・コクテール」
登場人物
【味香】以前は広告代理店の営業だったが、バー好きが高じて酒場専門誌の編集に転職。以前に増して、いろいろなバーを巡るように。
北條智之さん(以下、北條)いらっしゃいませ。
味香)こんばんは。
北條)こちらのお席へどうぞ。
味香)<バックバーを見て>その細いボトルは何ですか?
北條)当店オリジナルのノンアルコールジン「NEMA」です。通常のジンに使われるジュニパーベリー以外に、「ローズヨコハマ」という品種の薔薇やタブノキ、銀杏など160種類のボタニカルを配合しています。
味香)ノンアルコールのジン、初めて見ました。そちらをベースにしたノンアルコールカクテルを頂けますか?
北條)ジン・トニックが人気ですが、例えば横浜らしいカクテルですと「ヨコハマ」や「ミリオンダラー」もノンアルコールでお作りできますよ。
味香)「ヨコハマ」をお願いします。<メニューを見て>それから「プリェスカヴィツァ」を。
―北條さんがカクテルメイキング―
北條)昔のカクテルブックを見ると、「ヨコハマ」のレシピにラズベリー・シロップ(※)が使われています。そこでセルビア産ラズベリーと、シロップの代わりにキャラメルを加えました。横浜で生キャラメルが話題になっていることもあって。
味香)「NEMA」というのは?
北條)店名“Nemanja”の頭文字と、セルビア語で「無い」の意味を掛けています。アルコール度数が1%以上の飲料は酒税法で「酒類」と定義されていて、1%未満はローアルコールまたはノンアルコールとして認められていますが、このジンは0.00%。アルコール成分を全く含まず、無添加、保存料ゼロで造っています。
味香)アルコール0と謳っていても微量に含まれる場合があるけど、これは0.00%……。
北條)ジンを造ってから脱アルコールするのではなく、芳香蒸留水をブレンドする方法を取っています。<窓の外を指して>あちらに見えるのが、ローズヨコハマとタブノキです。横浜市内に無農薬で育てているところがないと知って、自分で作ろうかなと。ジュニパーベリーも育てています。
味香)凄く手間がかかっていますね。もうひとつのNEMAと書かれたボトルは?
北條)こちらはノンアルコールのアブサンです。ニガヨモギ、スターアニス、フェンネル、オーバーナイトセンセーションなどのハーブをブレンドしました。
味香)原料になる水の質も、重要でしょうね。
北條)八ヶ岳山麓源流の湧き水を使用しています。その近くでローズウォーターを製造されているアサオカローズさんでNEMAの蒸留、ブレンドなどをして頂いています。
味香)ローアルコールカクテルもできますか?
北條)NEMAのジンをベースにしたジン・トニックに、通常のジンを少量加えたりしています。
北條久美子さん(以下、北條久美子)お待たせいたしました。<プリェスカヴィツァを差し出す>
ハンバーグをパンに挟んで、ハンバーガーのように召し上がってください。そちらにある生の玉ネギ、アイヴァル、チーズはお好みで。アイヴァルは、セルビアで人気のパプリカペーストです。
味香)先ほどもセルビア産のラズベリーをカクテルに使われていましたよね。
北條久美子)私が大好きなバイオリニスト、ネマニャ・ラドゥロヴィチさんがセルビアご出身で。店名にもさせて頂きました。
味香)それでセルビア料理を出されているんですね。<メニューを見て>「ライン・コクテール」を頂けますか?
―北條さんがカクテルメイキング―
味香)このカクテルは聞いたことがないです。
北條)四谷三丁目にあった伝説のバー「カフェー・ライン」の前田米吉さんが、1920年代前半にお店のオリジナルとして考案されたカクテルです。伝わっているレシピはシェイクですが、僕はステアで作っています。横浜出身の著名なバーテンダー、浜田昌吾さんが1931年に寿屋カクテルコンテストで入選された作品で、ジャパニーズウイスキーベースのカクテル「サンデー・コクテール」もお勧めですよ。
味香)北條さんといえばフレア(※2)ですけど、メニューを見るとクラシックやミクソロジーも幅広くされていますね。そういえば新宿のバー「Jeremiah」で、市川さんが大会に出場されたときに北條さんが審査員だったと伺いました。どちらかでフレアを教えたりは?
北條)東京観光専門学校で講師をしています。<味香がカクテル・ピンを持ち上げるのを見て>そのガーニッシュは、らっきょうです。
味香)らっきょう⁉
北條)似たものですとパールオニオンを使うカクテルがありますが、面白いですよね。
味香)古いカクテル、もっと知りたくなってきました。ノンアルコールもミクソロジーも、セルビア料理も気になります。
北條久美子)セルビア料理はボリュームがあるので、もし宜しければお友達といらしてくださいね。4名様以上でしたらコース料理を承っています。
味香)なかなか食べられないお料理ですもんね。誰か誘ってみます。
※
現在のスタンダードなレシピでは、グレナデン・シロップが使われている。
※2
北條さんは、日本におけるフレアバーテンダーの先駆者として有名。
Cocktail Bar Nemanja 北條智之さん
神奈川県横浜市中区相生町1-2-1 パレカンナイ6F
045-664-7305
18:00~02:00(土18:00~23:00)
チャージ 500円、サービス料なし
席数 15
カクテル、ウイスキー、ジン 各1,000円~(税込)
本日のお会計
ヨクハマ・レッド・ブリック 1,200円
ライン・コクテール 1,400円
プリェスカヴィツァ 1,400円
チャージ 500円
計 4,500円
※合計は税込価格です