登場カクテル「ネイキッド・アンド・フェイマス」「オアハカ オールド・ファッションド」
登場人物
【味香】広告代理店の営業だったが、バー好きが高じて酒場専門誌の編集に転職。以前に増して、いろいろなバーを巡るように。
磯部太郎さん(以下、磯部)こんにちは。
味香)こんにちは。いま「伊勢藤」へ行ってきました。
磯部)いいですね、日本酒ですか。
味香)日本酒と冷奴に味噌田楽、塩から。お店を出たら、磯部さんのカクテルが飲みたくなって。メスカルベースでお願いします。
磯部)前回は「かいわれ」でしたよね。
味香)そう、かいわれ大根とエルダーフラワーとメスカルだなんてユニークな組み合わせだなと。
磯部)豚しゃぶを食べていた時に、かいわれの青っぽい辛さを感じて思いつきました。お料理からヒントを得ることが多いですね。今日は、さっぱりした感じにしましょうか。
味香)お任せします。
―磯部さんがカクテルメイキング―
磯部)ニューヨークのバー「Death & Co」のオリジナルカクテル「ネイキッド・アンド・フェイマス」です。メスカルとシャルトリューズ、アペロール、ライムをシェイクした、僕の中では斬新な組み合わせです。ショートカクテルですが、度数が低めで飲みやすいと思います。
味香)このライムはどうなっているんですか?
磯部)ハンドジューサーで搾った後の実をひっくり返しています。ジンライムにも添えていて、実の上にビターズやアブサンを垂らすと香りが留まって最後まで楽しめるんですよ。
味香)面白い使い方ですね。このメスカルも、ラベルのインパクトがある。
磯部)「アモーレス」というブランドが出しているラインナップのひとつです。ラベルは様々なアーティストによって描かれているので、ボトルごとに違います。
味香)アガベスピリッツの一種がメスカルでしたっけ?
磯部)そうです。原産地呼称が決まっているメキシコのアガベスピリッツが「テキーラ」「メスカル」「ソトル」「バカノラ」「ライシージャ」の5種類。すべて揃えていますので、飲み比べもできます。
味香)ビターズも、こんなに種類があったんですね。
客A、B)<扉を開ける>こんにちは。
磯部)こんにちは。こちらへどうぞ。
客B)独立されたこと、Aさんに教えてもらって。
客A)それで連れてきました。お店の雰囲気、前と似てるよね。壁の色も。
磯部)同じネイビーブルーにしました。
客B)あのジンフィズ、あります?
磯部)はい、東京會舘スタイル(※)のですね。
客A)この前飲んだ、オリーブオイルのカクテルも面白かったよ。
客B)どんなカクテルですか?
磯部)オリーブオイルのフレーバーが付いたジンをベースにしたカクテル「ジン&イット」です。ジンにオリーブオイルを混ぜてひと晩置くと分離するので、ジンはカクテルに、除去したオリーブオイルは自宅に持ち帰ってドレッシングにしています。
客B)無駄がないですね。
客A)ドレッシングは逆にジンフレーバーになるしね。會舘フィズみたいに、ミルクウォッシュ(※2)したものでお勧めは?
磯部)メスカルとアールグレイをミルクウォッシュしたものと、唐辛子シロップを合わせてチャイのように仕上げたカクテルがあります。
客A)それにします。
磯部)<味香の前に来る>ビターズは「スクラッピーズ」や「フェルディナンズ」などがあります。苦味を足すだけではなく、材料のつなぎにしたり、お酒が持っている要素のひとつを引き出すような使い方もありますね。
味香)メスカルとビターズを使ったカクテルをお願いできますか?
磯部)かしこまりました。
―磯部さんがカクテルメイキング―
磯部)テキーラとメスカルをベースに、オールド・ファッションドのツイストをお作りしました。アンゴスチュラ・ビターズとアボッツ・ビターズが入っています。
味香)<スクラッピーズ・ビターズを見て>このビターズ、かなり減っていますよね。基本的にビターズは少量しか使わないから、なかなか減らなさそうなのに。
磯部)ジンをストレートで味わって頂いた後に、ビターズを何度か垂らして味変させることもあります。例えばアップル&レモンタイムのビターズから始まって、伽羅、ピーチ&ホップ、アボッツ……といったように、ビターズを加える毎に味わいの変化が愉しめます。
味香)それならビターズの出番が結構ありますね。
磯部)糖分を使わずに、甘い香りで錯覚させるためにアブサンを少量使ったりもしますよ。
味香)ビターズとアブサン、興味が沸いてきました。それからアガベスピリッツも。
磯部)また伊勢藤さんの帰りにでも立ち寄ってくださいね。
※ 東京會舘スタイル
「會舘フィズ」と呼ばれるミルク入りのジンフィズ。東京・丸の内の東京會舘が発祥。
※2 ミルクウォッシュ
牛乳にお酒を加え、しばらく置いておくか冷却して濾過、分離させて固形分を取り除く技法。牛乳のフレーバーが液体に移ると共に、液体が透明になる。ほかに、バターやチーズ、ベーコンを使ったウォッシングがある。
BAR SCALA 磯部太郎さん
東京都新宿区袋町1 栗原ビル3F
03-6228-1206
※営業時間はSNSなどでご確認ください。
火曜日休み
チャージ 500円、サービス料なし
席数 12
カクテル、ウイスキー、テキーラ、メスカル 各900円~(税抜)
本日のお会計
ネイキッド・アンド・フェイマス 1,300円
オアハカ オールド・ファッションド 1,400円
チャージ 500円
計 3,520円
※合計は税込価格です