登場カクテル「ラビットファクトリー」「シェイク」
登場人物
【味香】以前は広告代理店の営業だったが、バー好きが高じて酒場専門誌の編集に転職。以前に増して、いろいろなバーを巡るように。
【瞳】酒場専門誌の編集部に勤める味香の同僚。美味しい食事とお酒のためなら、どこへでも行く。
味香)この先は「奥渋」エリアですよね。
瞳)そう、このまま歩けば神山町、富ヶ谷。その手前に「LIQUID FACTORY」があるの。
味香)バーというより、工場みたいな名前。
瞳)いろいろな点で一般的なバーとは違って、面白いよ。<扉を開ける>
齋藤恵太さん(以下、齋藤)こんばんは。
瞳)こんばんは。<メニューを見て>「クイックバーベキュー」をお願いします。
味香)バーベキュー?
瞳)メスカルがベースだから、飲んでみたくて。カクテル名の下に、材料が書いてあるでしょ。
味香)グリルドパイン、ゲンチアナ、胡麻油、チリにメスキートのスモーク……。
齋藤)メスキートはテキサスのBBQで使われる燻製用チップで、カクテルにスモーク香をつけます。
味香)こちらのメニューは、すべてオリジナルですか?
齋藤)はい。シーズン毎に入れ替えていますが、メニューの1枚目が定番カクテルですね。
味香)最初に載っている「ラビットファクトリー」にします。
―齋藤さんがカクテルメイキング―
味香)何から着想を得て、このカクテルを?
齋藤)近くのビストロでキャラウェイシードの効いたキャロットラペを食べていたときに、カクテルにしたら面白いかなと。それと、アメリカンダイナーのキャロットケーキに入っているドライフルーツやナツメグを組み合わせてみました。レストランで食事をしたり、料理番組を観て参考にしていることは多いですね。
瞳)スタンダードカクテルがメニューにないのも珍しい。
齋藤)工場の名が付くように、カクテルを製品として出しています。メニューの材料以外は置いていないので、例えばライムを使うカクテルがない時期にはギムレットもマルガリータも作れません。必要最小限の材料しかない、ミニマルでフードロスも減らせます。手が届く範囲に材料が揃っていれば、バックバーも必要ないかなと。
味香)後ろのスペースは調理場ですか?
齋藤)遠心分離機、サーモミックス、真空包装機、低温調理器などが置いてある“ファクトリー”です。自分だけでなく、ほかのお店のバーテンダーも利用できるコワーキングスペースをサブスクで提供しています。カクテルを試作するための機材やスペースが足りない場合などに使って頂いていますが、複数のバーテンダーが集まることで、お互いのアイデアから新しいものが生み出されるんじゃないかという期待もあって。
味香)そちらをフェンスで覆っているのも、工場っぽいですね。
齋藤)カクテルを作る工程を見るのが好きというお客さまが多いので、試作段階からご覧になって頂こうかなと。工場の生産ラインを見学できるような感じです。
瞳)齋藤さんが元整備士だったと聞いて、この内装に納得しました。アメ車のお店でも働いていたんでしたっけ。
齋藤)そうですね。地元が横浜で、最初はアメリカンダイナーを作りたいと思っていました。メニューの最後にシェイクがあるのも、その影響です。
味香)フェンスに掛かっているナッツも、製品みたい。
齋藤)真空パックにして、それっぽくしています。「TOKYO FAMILY RESTAURANT」さんにハンドメイドで加工して頂いていて、いまご用意できるのは「キャラメリゼ・ピーカンナッツ」「ブラックペッパーのマカダミアナッツ」「味噌のピーナッツ」「ピスタチオのプラリネ」の4種類です。
味香)ピーカンナッツと、シェイクをください。
齋藤)今シーズンのシェイクはアップルパイをイメージしたもので、季節によって内容は変わります。テイクアウトされるお客さまもいらっしゃいますよ。
瞳)私は「オールドファッションド・チョコレートバー」を。
―齋藤さんがカクテルメイキング―
味香)<齋藤さんのキャップに書かれた「液体工場」の文字を見て>その帽子はオリジナルですか?
齋藤)「LIQUID WORKS」というブランドでバーのコンサルティングやプロデュース、バーウェアの開発・販売をしています。キャップはバーテンダー用にツバを短めにして、視界が広くなるようにデザインしました。ビンテージ着物の生地でシルク100%、軽くて通気性も良いですね。
味香)そちらの壁に掛かっているエプロンも?
齋藤)自分で使いながらトライ&エラーを繰り返して、栓抜きやソムリエナイフなどを入れるポケットのサイズや位置を決めました。キャップもエプロンも、日本のバーテンダーが考えたものを日本の素材で日本の職人が作るメイド・イン・ジャパンです。
瞳)幅広い活動をされていて、楽しそうだよね。
味香)バーとバーテンダーの概念が変わりそう。1階でガラス張りだし、バーに慣れていない人も入りやすい。流れてる音楽もヒップホップだし。
瞳)これから奥渋で工場見学する人が増えるかもね。
LIQUID FACTORY 齋藤恵太さん
東京都渋谷区宇田川町42-12
03-6416-5252
17:00~01:00(金・土17:00~02:00、日・祝17:00~00:00)
月曜休み
チャージ、サービス料なし
席数 20席+スタンディング
カクテル 1,300円~(税抜)
本日のお会計
ラビットファクトリー 1,500円
シェイク 1,500円
キャラメリゼ・ピーカンナッツ 500円
計 3,850円
※合計は税込価格です