思い出のボトル

「うっ、美味しくない……」 長野県松本市からバーテンダーになるため上京した深澤篤志さんは、新宿のバー「リフレイン」で勤務していた。カウンター越しに...

漢詩の綴られたラベルが、異彩を放つ一本。冒頭の「客中行」から、中国の詩人・李白の作品を捩ったものだと気づく人もいるかもしれない。続く「望夢亞」がスコット...

その一杯を供するとき、バーテンダーは何を思いグラスに注いでいるのだろう。ただ差し出すのではなく、酒を生んだ人や土地、文化の香りまでもが身体の中で息づくよ...

４輪の薔薇が、こちらを向いて咲いている。描かれた絵から、容易く連想できる銘柄。華やかで甘く、ラベルを見ていると薔薇の香りが漂ってくるような錯覚に陥ってし...

小さい頃からの夢は、コックさん。幼稚園から帰ってくると、台所に立つ祖母の隣に並んだ。16歳でフレンチの料理人を目指し、24歳で渡仏。一流のビストロで修行...

ハイランダー・インというバーが、スコットランド・スペイサイドのクライゲラヒにある。同名のホテル内にあり、その品揃えが素晴らしく、ウイスキーファン憧れの場...

２００６年５月末、藤井達郎さんはスコットランド・グラスゴーへ向かう機内にいた。初めての海外旅行、偶然にも出発日は自身の誕生日。期待と緊張の中、長時間のフ...

これを美味しいと感じるなんて、僕はへそ曲がりだろうか？ 近所のバーでマスターに勧められ、初めてシングルモルトを飲んだ石川伸彦さんはボトルを眺めなが...

ボーッ……。響き渡る汽笛の音と潮の香りを感じる港町に、溶け込むように佇んでいる一軒のバーがある。横浜港が一望できる山下公園の傍近、3杯のマティーニ・グラ...

目玉の付いたドアに近付き、その先を覗くと店内が奇妙に歪んで見える。スクリーンに流れるサイレント・コメディ、実際に映画で使われたセット、樽の上に腰かけた宍...

57年間の営業を終えた新橋の名店「トニーズバー」の扉が再び開いたのは、２０１０年４月のことだった。「T.O」と名を変えたカウンターに立つのは、越智卓さん...

ドイツのボトラー“ザ・ウイスキー・エージェンシー”の芸術的なラベルが並ぶバックバーは壮観だ。「バックバーはひとつの絵」と話す鈴木裕介さんは、アートと音楽...

レダイグはスコットランド・マル島にあるトバモリー蒸留所が生産するピーテッドモルトの銘柄で、トバモリーの名が付くものはノンピートとして現在は位置づけられて...

余市駅に降り立ち、石造りの重厚な正門をくぐると「ニッカウヰスキー 北海道工場」の看板が見えてくる。蒸溜棟、乾燥棟の間を抜けて奥へ進めば、多数の赤い屋根が...

誕生日や記念日など、特別な日を祝う際に贈られるヴィンテージワイン。三十路を迎える節目の年、山田高史さんのもとにソムリエである友人からバースデーヴィンテー...

ダルマの愛称で親しまれる「サントリーウイスキーオールド」が産声をあげたのは、１９４０年11月だった。戦災を免れ、発売されたのが１９５０年。山崎蒸溜所で1...

ガード下に飲食店が連なる神田駅界隈。南口から東京駅方面へ少し進むと、「Sandy Mac」のネオンが窓に掛かっている。有楽町「キャンベルタウンロッホ」、...

鮮やかな翡翠色が目を引くバックバーには、ボトルではなく食器が並んでいる。アメリカ・アンカーホッキング社の耐熱ガラスブランド「ファイヤーキング」の皿やマグ...

ヴァイキングの言葉で「鹿の島」を意味するスコットランド・ジュラ島には、野生の鹿が４～５千頭も棲息している。人口は２００人ほどだから、鹿に出会う確率のほう...

スコットランドの国鳥である雷鳥は、年間を通して同じ場所で過ごし、季節による移動をしない留鳥だ。夏は黒褐色、冬は純白と羽毛の色を変化させる。この雷鳥をラベ...

ロンドン塔を守る近衛兵、ビーフィーター。彼らはクラウンジュエル（王家の宝）を守り、国王主催のパーティで残った牛肉の持ち帰りを許可されたことからBEEF+...

LPは直径30㎝、よってジャケットは32～3cmの正方形。35cmの高さと奥行をもたせれば、レコード棚として効率がいい。音楽業界にいた鈴木勝雄さんは、自...

海を思わせるヨード香とスモーキーフレーバー、フルーティでスイート……。アードベッグといえばそんなテイスティングコメントが思い浮かぶが、仕込水として使われ...

「船乗りだった父が、いつも土産に買ってくるのがジョニ黒でした。当時は１万円もする高級品で、憧れのボトル。飲まずに飾っておく人も多かったようですが、父は水...

天使のようなグラッパ職人と言われたロマーノ・レーヴィは、イタリア・ピエモンテに住み、父親から受け継いだ昔ながらの製法を貫いた。戦前から伝わる直火式蒸留機...

  ２０１１年３月、新井洋史さんは「ボルス・アラウンド・ザ・ワールド」（※）のファイナルにアジア代表として出場するため、オランダ・アムス...

  上はグレープフルーツ・ジュース、下は紅茶。２つの層を混ぜて飲むと、爽やかなフレーバーが広がる……。横浜の老舗紅茶専門店「サモアール」...

有楽町駅・日比谷口を降りて線路沿いに歩いていくと、下へ伸びる狭い階段に「CAMPBELLTOUN LOCH」の文字がある。降りた先にある引き戸の向こうは...

グレンタレット１９６６は、漆黒のフロスティボトルに蒸留年と瓶詰年がローマ数字で表記された、心惹かれる一本だ。映画のクレジットなどでもこの表記は使われてい...

イギリスはエセックス州のバジルドン。ロンドンから東へ40キロほど離れた場所で、その中にレインドンという町がある。以前から新しいマティーニを創作したいと考...

スコッチモルト販売株式会社 SAKETRY － サケトライ －より 思い出のボトル 絵：佐藤英行 文と写真：いしかわあさこ