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アイリッシュウイスキー『LAMBAY』ブランドセミナーレポート

2018年7月30日、株式会社都光酒販主催にて、アイリッシュウイスキー『LAMBAY』のブランドセミナーが行われました。講師は、グローバルアンバサダーのサビーヌ・シーハン女史でした。

まずは、アイリッシュウイスキーの歴史から説明がありました。アイルランドでは、6世紀には既にウイスキーが造られていたと考えられています。1900年頃がアイリッシュウイスキーのピークで1000万本以上のボトルが生産されており、スコッチの生産量を上回ることもありましたが、やがてより飲みやすく軽やかなスコッチブレンデッドにシェアを奪われます。また、1920年から33年までのアメリカ禁酒法によって輸出に打撃があり、さらに同時期に発生した英国からの独立運動も激化し英連邦各国への輸出も限られるようになりました。その結果シェアは激減し、蒸溜所はブッシュミルズとミドルトンの2か所までに。しかし、1990年頃に第三の蒸溜所クーリーが設立されてから、アイリッシュの再生が始まりました。現在、第4位のウイスキー輸出国であり(全ウイスキーに対するシェアは4%程度)、年間平均で年10%以上の成長を続けています。2018年はアイリッシュ・ルネッサンスともいえ、蒸溜所も12から28か所になる予定です。

続いてランベイ島について。南アイルランドの首都ダブリンの3km沖合にある島で、面積2.5k㎡・標高250m、火山活動でできた島です。7代続くベアリングBarings家が1904年から個人所有しており、一般には立ち入り禁止です。野生のアザラシやパフィンなども生息していますが、1953年に弱っていたワラビーも本島の動物園から移住させています。

ランベイ・ウイスキーは、ベアリング家7代目のアレクサンダー・ベアリング氏とカミュ5代目のシリル・カミュ氏のジョイントによって造りだされました。

アイリッシュ伝統の3回蒸留したシングルモルトウイスキーを、カミュ社のコニャック樽にて後熟させた原酒を使用しています。ランベイ島には蒸溜所がないので、原酒は本島にある蒸溜所よりバルクで購入し、この島では熟成のみを行っています。熟成庫は、シーカスクルームSea Cask Roomと呼ばれる築100年以上の建物を使用しており、現在24樽をダンネージ式で熟成しています。一度に6樽を乗せることのできる船で運びこんでいます。

また、加水用の水としてこの島のトリニティー・ウェル・ウォーターTrinity Well Waterを使用しています。この水は、ニュージーランドやフィジーでもみられる火山性土壌porpheryを透過してくるため軟水です。この水でアルコール度数を40度にしています。

今回は2種類のウイスキーが紹介されました。

一つは、「スモールバッチ・ブレンド」。バーボン樽にて4年以上寝かせたモルトウイスキーをカミュ社コニャック樽で1か月ほど後熟した原酒を使用しています。このウイスキーはモルト30%・グレーン70%で、カミュ社のマスターブレンダーであるパトリック・レジェ氏がブレンドしています。テイスティングは、お花、スパイス、柑橘やモルトの香りがし、スムースな飲み口が特徴です。

もう一つは、「シングルモルト」。ノンピートの麦芽を使用し、5年間ファーストフィルのバーボン樽にて熟成した後、コニャックの樽で6か月後熟を行っています。この時使用するコニャック樽はカミュ社で40年使用したもので、容量450~470ℓ、フレンチオーク製です。6か月の期間はあくまで目安で、樽ごとに熟成のピークを見極めています。テイスティングは穏やかな甘いバニラ、モルトやスパイスの香り、ココナッツやクリスマスケーキのようなまろやかでスムースな味わいです。

今回のセミナーの感想

カミュ社がリリースしているレ島にて熟成を行っているコニャック「イル・ド・レ」と同じ方法をウイスキーに持ち込んだと感じました。島特有の潮の風味が付加されるのを狙っているのでしょう。またウイスキーでコニャック樽後熟は、グレンモーレンジなどでリリースされたことはありますが、定番品としてははじめてといえます。フレンチオーク由来のしっかりとしたタンニンのニュアンスが程よく感じられ、またコニャック由来のフルーティーな香味がバランスよく感じられます。全体的に若い部分はありますが、アイリッシュらしくまろやかで飲みやすいウイスキーといえます。

もともとの原酒は本土の蒸溜所(具体的な蒸溜所名は公表していないようですので、ここでは伏せます。さりげなく明らかにはしてくれましたが……)より購入していますが、自然保護の観点などからこの島に蒸溜所をつくることは考えていないように感じました。

カミュ社が実際に蒸溜所を造って(あるいは買収して)ウイスキー業界に参入することはあるのでしょうか? このウイスキーの動向を踏まえて判断されるのかもしれません。

 

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