LPは直径30㎝、よってジャケットは32~3cmの正方形。35cmの高さと奥行をもたせれば、レコード棚として効率がいい。音楽業界にいた鈴木勝雄さんは、自ら図面をひいてレコード棚をつくっていたが、これがウイスキーのボトルにもちょうどあてはまる。
此処のバックバーが、そうだ。整然と並ぶのを眺め、図書館のようだと言う客人もいる。本の館ならぬ、モルトの館である。シングルモルトが国内でほとんど出回っていなかった1997年、「モルトハウスアイラ」はオープンした。
「シングルモルトにハマったきっかけが、アードベッグでした。ケイデンヘッドの1974、オーセンティック・コレクション。アイラ島の蒸留所に感じるピーティさだけでなく、さまざまな要素が複雑に絡み合って、厚みのある味わい。強烈なインパクトでしたね」
開店翌年から2004年までは毎年スコットランドを訪れ、アードベッグ蒸留所にも通った。1980年代に操業停止していた同蒸留所が、グレンモーレンジ社の買収により復活したのが奇しくも開店の年。訪れる度に、当時のディスティラリー・マネージャー、スチュワート・トムソン氏と飲み語った。その後蒸留された原酒を数年おきにボトリングし、「ベリー・ヤング」から2008年に発売された10年ものの「ルネッサンス」に至るまで再生の道のりをファンに知らせてきたのは周知のとおりである。
その氏が初めてボトリングしたのが、1976年蒸留、1999年ボトリングのマネージャーズ・チョイス。蒸留所限定のボトルだ。それからはフランス、イタリア、日本向けに同ブランドがリリースされていった。このボトルを手にするとあのウェアハウスの匂いが漂ってくる、と鈴木さんが目を閉じた。
Malt House ISLAY 鈴木勝雄氏
東京都練馬区豊玉北5-22-16 キジマビル2F
03-5984-4408
18:00~02:00(金・土~04:00、日~00:30)
無休
※店舗情報は取材時のものです。営業時間帯等、変更されている可能性がありますのでご了承ください。
絵:佐藤英行
文と写真:いしかわあさこ