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思い出のボトルラフロイグ10年

ラフロイグ10年

これを美味しいと感じるなんて、僕はへそ曲がりだろうか?

近所のバーでマスターに勧められ、初めてシングルモルトを飲んだ石川伸彦さんはボトルを眺めながら考えていた。海藻や薬品のようなフレーバーがして、確かに変わった味だ。でも、この味を生み出す蒸留所はどんなところなんだろう。興味は尽きず、やがてバーで働き始めた石川さんは先輩に誘われてスコットランドの島巡りツアーに参加することになった。大倉山のバー「グローリー」の宮内誠さんが主催した企画だった。

ハイランドパークとスキャパ蒸留所があるオークニー島をはじめ、スカイ島はタリスカー、ジュラ島はアイル・オブ・ジュラと巡って念願のラフロイグ蒸留所があるアイラ島へ。もしかしたら、現地のピートや麦芽がもらえるかもしれない……。封のできるビニール袋をいくつか持参していたが、肝心のラフロイグ蒸留所へたどり着いた時にはすべて使ってしまっていた。

「私のを使って。ここに、来たかったんでしょう?」

大森のバー「テンダリー」の宮崎優子さんから声をかけられ、御礼を言うとピーテッド麦芽を袋に入れた。すると、ハンカチにそれを包む宮崎さんの姿が目に映った。先輩の懐の深さと優しさが、身に染みた瞬間だった。

「初めてお会いする同業者が多くて、しかも先輩ばかり。スコットランドへ来ることができて舞い上がっていた僕に、とても親切にしてくださいました。本当に、良い思い出ばかりで……。いま思えば、僕にとってこの旅がバーテンダーとしての第一歩だったんです」

 

BAR Sheep 石川伸彦氏

神奈川県横浜市中区野毛町1-46-1 MS野毛ビル2F
045-262-1614
19:00~02:00
日曜休み

※店舗情報は取材時のものです。営業時間帯等、変更されている可能性がありますのでご了承ください。

絵:佐藤英行
文と写真:いしかわあさこ

 

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