漢詩の綴られたラベルが、異彩を放つ一本。冒頭の「客中行」から、中国の詩人・李白の作品を捩ったものだと気づく人もいるかもしれない。続く「望夢亞」がスコットランド・アイラ島のボウモアに変換できれば、その後の詩も訳してみたくなる。
『スコットランドの酒は泥炭の香りを漂わせ、玉の盃に注がれて琥珀色に光っている。ただ主人が気持ちよく酔わせてくれるなら、それでいい。ここが故郷か異郷かなどということは、忘れてしまうだろう』
パッションフルーツやマンゴーといった、南国フルーツを感じるボウモアらしいフレーバー。2001年に村澤政樹さんが樽ごと購入し、120本をボトリングした。当時、樽買いは珍しかったはずだが、価格も聞かずに購入を決めてしまったというから相当魅力的な味わいだったのだろう。遊び心のある漢詩ラベルは、村澤さんの友人が制作したものだという。
「46.2%で、バランスの良い度数ですね。ケイデンヘッドも46度の加水タイプを出しているように、本来は加水したほうが香りも立つし、身体にも優しい。本当に美味しいスコッチは、加水することによって化けるんですよ」
1996年に開店した「ヘルムズデール」は、今年20周年を迎えた。数多くの飲み手がお祝いに駆けつける中、村澤さんは思わず最後の一本であるシリアルNo.1を開封することに。これが無くなってしまったらどうしよう、でも飲まなければ意味がない……。心の中でそう唱えながら、大切に注いだ。ウイスキーは、一期一会。似たようなものはあっても、同じものは絶対に出てこないのだから。
HELMSDALE 村澤政樹氏
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無休
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絵:佐藤英行
文と写真:いしかわあさこ