ジョン・ベッグ

ボーッ……。響き渡る汽笛の音と潮の香りを感じる港町に、溶け込むように佇んでいる一軒のバーがある。横浜港が一望できる山下公園の傍近、3杯のマティーニ・グラスが描かれた看板が目印だ。

カクテルバーかと早とちりしてしまいそうになるが、視界に入るのは幾多のウイスキーボトル。天井を見上げると、所狭しとぶら下がるアンティークのオープナーやウォータージャグがあり、店主の山下和男さんがかけるレコードから時々漏れるスクラッチノイズにノスタルジーをおぼえる。

東京・国立で学生時代を過ごした山下さんは、「ビブロ」というカフェに入り浸っていた。そこに立っていたのは、現在バー「ヒース」の店主である大川貴正さん。マッカラン、ハイランドパーク、フェイマスグラウス、ヘッジス&バトラー、そしてジョン・ベッグなど、厳選されたウイスキーが並んでいた。

「いずれも、ショット千円くらいでしたね。学生にしては高かったけれど、よく通いました。大川さんに教えて頂いて、ジョン・ベッグとロッホナガーを飲み比べたりしましたよ」

1845年、スコットランド東部のアバディーンシャーにあるディー川の辺に地元の資産家ジョン・ベグが蒸留所を建設。製造したモルトウイスキーに、自身の名を付けて販売した。その銘柄は後にブレンデッドウイスキーになり、モルトウイスキーは蒸留所名をとってロッホナガーに。隣接するバルモラル城をヴィクトリア女王が買い、蒸留所を訪問したことでロイヤル・ロッホナガーと呼ばれるようになる。

創業者の名では、もう造られていないウイスキー。しかし、その味わいを懐かしみ、求め彷徨う飲み手は少なくない。

 

バー スリーマティーニ 山下和男氏

神奈川県横浜市中区山下町28 ライオンズプラザ山下公園
045-664-4833
17:00~01:30(月、日~00:00)
火曜休み

※店舗情報は取材時のものです。営業時間帯等、変更されている可能性がありますのでご了承ください。

絵:佐藤英行
文と写真:いしかわあさこ

 

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