ヘンドリックス・ジン セミナーレポート

2017年11月30日、三陽物産株式会社主催の「ヘンドリックス・ジン セミナー」が東京にて開催されました。

ヘンドリックス・ジンは、スコッチモルトウイスキーのナンバーワンブランド・グレンフィディックを製造しているウィリアム・グラント&サンズ社が製造しているプレミアム・ジンで、1999年から販売され、現在100ヶ国以上で飲まれています。今回はブランドアンバサダーのモーガン・フラナガン氏が来日し、原酒などのテイスティングを交えたセミナーが行われました。

 

ジンのカテゴリー

まずは、ジンのカテゴリー分類について。
ゴードンやタンカレーなどポピュラーなジンの多くが「ロンドン・ドライ・ジン」に分類されますが、ヘンドリックス・ジンは「ディスティルド・ジン」に分類されます。両者とも砂糖や水・アルコールの添加は可能ですが、ディスティルド・ジンは蒸留した原酒にフレーバーを添加できます。これによりフローラルでマイルドなジンを造ることができます。ジンのカテゴリーでは、より条件の軽い「ジン」もありますが、現在様々なジンが製造販売されていることから、今後カテゴリー分類の変更もあるかもしれません。

 

ウィリアム・グラント&サンズ社とヘンドリックス・ジン

ウィリアム・グラント&サンズ社は、それまでスコッチのモートラック蒸溜所のマネージャーだったウィリアム・グラントが1886年に家族と始めた会社です。以後100年以上も家族経営のまま現在まで続いており、それゆえ自由な立場で酒造りをできることが特徴です。スコッチウイスキーの蒸溜所は現在100以上ありますが、長く家族経営を守っているのはグレンフィディックのほか、グレンファークラスやスプリングバンクくらいになっています。

ヘンドリックス・ジンは、スコッチウイスキーのグレーン工場であるガーバン蒸溜所の一角にあるジン蒸溜所で造られています。
マスター・ディスティラーはLesley Grecieレズリー・グレシー女史で、スピリッツの天才と呼ばれています。元々薬剤師で、にがい薬のマスキングを専攻していたため、フレーバーに関する知識が豊富で、同社のウイスキー以外の製品のほとんどを管理しています。インターナショナル・スピリッツ・チャレンジISCの審査員も長年勤めています。彼女がこのヘンドリックス・ジンのレシピを考案いたしました。

 

13種類のボタニカル

ヘンドリックス・ジンは、13種類のボタニカルを使用しています。それぞれクオリティーの高いものを選んでおり、世界各国から調達しています。

ベースとなるのは下記5種類。

  1. ジュニパーベリー(マセドニア産)
  2. コリアンダー・シード
  3. アンジェリカ・ルート
  4. オレンジ・ピール
  5. レモン・ピール

上記以外にはキュバブベリー、キャラウェイ・シード、オリス・ルート、カモミール、エルダー・フラワー、ヤローが使われます。
これら11種類のボタニカルがスチルに入れられるものです。

これらとは別工程で、キューカンバーとバラのエッセンスを用意いたします。

キューカンバーは、ベルギー産の皮の香りが強いキュウリを使います。水分が多く、加熱すると焦げたキャベツのような香りが生じるので、他のボタニカルと一緒には蒸溜はできません。フレッシュなキュウリを長くアルコールに浸漬し、低温にて蒸溜しエッセンスを得ます。キュウリはイギリスの夏の風物詩であり、サンドウィッチにも用いられることから、イギリスの象徴と考えレシピに組み入れられたそうです。このキューカンバー・エッセンスは爽やかでフルーティー、みずみずしいキュウリのアロマが感じられます。

バラはブルガリア産ダマスケーナ種を使用しており、日が出る前の早朝に全て手摘みで収穫されます。500㎏の花びらをゆっくりと低温で抽出して、1㎏のローズオイルを得ます。強すぎず繊細で優しいバラの香り、桃のようなフルーティーさもあり自然な印象です。

 

蒸留機とテイスティング

蒸溜器は、全部で3基。Bennet Stillベネット・スチルが2基あり、1基はオリジナルで、もう1基は追加でリメイクしたもの。それからCarterhead Stillカーターヘッド・スチルが1基。オリジナルの2基は1966年にオークションで購入したものです。ジンのレシピも付いてきましたが、ヘンドリックス・ジンとは異なるものです。ジンの製造は4名で行っています。

ベネット・スチルのオリジナルは1860年製で、容量1000ℓ。オランダより輸入したアルコール度数96%の麦ベース・ニュートラルスピリッツを60%まで加水して、11種類のボタニカルをこの釜の中で1晩浸漬します。その後ゆっくりと加熱蒸溜し、70%程度の原酒Aを500ℓほど得ます。

原酒Aのテイスティング

原酒Aのテイスティングは、ヘビーでリッチフレーバー、オイリーでジュニパーベリーの風味がしっかりと感じられます。これは「ボディーをつくる原酒」で、加水すると白濁します。

カーターヘッド・スチルは1948年製で、容量1350ℓ。この蒸溜器のヘッドの部分にはプレートがあり、より高い精留効果も得られます。ラインアーム部にあるバスケットにボタニカルを順番に詰めて、ベネット・スチルと同様の60%スピリッツを加熱・蒸溜することで、ボタニカルのエッセンスを抽出し、70%程度の原酒Bを500ℓ程度得ます。

原酒Bのテイスティング

原酒Bのテイスティングは、まろやかでシトラスやフラワーの風味が感じられます。これは「まわりを包み込む原酒」で、加水しても濁りません。

ここで、各スチルともミドルカットをしています。最初に出てくる留液ヘッド10ℓ分はカットし廃棄します。本溜分ハート500ℓ程度を取り、その後の留液テールは次ロットと合わせています。

この2タイプのジンをブレンドして(割合は極秘)、原酒Cを造ります。原酒Cのテイスティングは、ジュニパーベリーのほか、スパイスの風味もしっかり感じられ、バランスがよく甘味もしっかりしています。加水すると白濁します。

原酒Cのテイスティング

原酒Cにキューカンバーとバラのエッセンスを加えます。これはGin Uncutと呼んでいて、ヘンドリックス・ターボ・バージョンといえるもので、アルコール度数が高く、ボタニカルの風味もしっかり感じられます。これも加水すると濁るので、実際の製品にする際は、水のほかにアルコールを添加し、加水しても濁らないよう調整します。

最後に製品(44%)をテイスティングすると、バランスがよく様々なボタニカルのニュアンスがとりやすい印象です。

バラの風味も感じられますが、それ以外のお花(エルダー・フラワーやヤロー)のニュアンスもしっかりと感じられます。

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