ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ会長 ポール・スキップワース(Paul Skipworth)さんインタビュー

1983年、スコットランド・エジンバラ北部の港町リースでザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(以下、ソサエティ)は設立されました。会員制のウイスキー愛好団体で、メンバーはソサエティが保有するボトルを優先的に購入したり、バーやホテルなどの関連施設やサンプリング会で優待が受けられます。今回、日本のソサエティメンバーと日本支部のスタッフに会いたくて来日したというポールさん。東京・汐留のパークホテル東京にある日本初のソサエティ公認バー「ザ ソサエティ」で、その日行われる親睦会の前にお話を伺いました。

―まず、ポールさんの経歴を教えて頂けますか。

以前は、モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(以下、LVMH)でアジアパシフィックエリアの責任者を務めていました。その後、グレンモーレンジィとアードベッグの最高責任者を経て、現在ソサエティの会長に就任しています。

―日本のウイスキーラバーの印象は?

LVMHの役員だった関係で日本には40~50回くらい来ていまして、日本の飲み手のことはよく理解しているつもりです。ほかのアジア圏の飲み手と比べて本当にいろいろなことをよくご存知で、知識のあるエキスパートのような人が多いですね。

―現在、ソサエティの会員数はどのくらいでしょう?

全世界で3万人ほどです。メンバーになれば、世界中の拠点でほかのメンバーと交流を深めることができます。例えばアメリカにはパートナーバーが、エジンバラにはワイン倉庫を改築した建物「ザ・ボルツ」にソサエティ本部がありまして、ラウンジやテイスティングルーム、宿泊施設を備えています。

―2015年より、グレンモーレンジィ社からスコットランドの個人投資家グループへとオーナーが変わりました。ソサエティ新組織のビジョンをお話頂けますか。

バラエティに富んだ樽をソサエティのメンバーとシェアするために、いろいろな蒸留所からたくさんの樽を購入しています。Webサイトにも多くの投資をして、ウイスキーの製造工程など様々なコンテンツをご覧頂けるようになりました。シングルカスクを飲む楽しみや喜びをお伝えして、世界中にウイスキーファンを増やしていきたいですね。最も重視しているのはメンバーシップで、シングルカスクを通してメンバー同士が楽しくコミュニケーションする機会が増えれば嬉しいです。

―何樽くらい保有されているのか、気になります。

はっきりとは言えませんが、将来皆さんにシングルカスクを愉しんで頂けるよう多くの投資をしています。1年熟成の若いウイスキーから30年くらいのものまで保有していまして、どのインディペンデントボトラーズにも負けないと自負しています。

―ニューポットも、ある程度熟成したウイスキーも購入されているということでしょうか。

以前は熟成したウイスキーを購入していましたが、3年ほど前からは自分たちで樽を購入して、それに若いウイスキーを入れて自社の貯蔵庫で寝かせています。

―良い樽を入手するために、何か工夫されていることは。

ウイスキーのバイヤーチームが3人いまして、彼らは約40年もの間、蒸留所と良い関係を続けてくれています。その関係性が大事で、それ以上でもそれ以下でもありません。ソサエティは飲み手にウイスキーを広める立場だと理解していて、快く譲ってくださっています。

―ユニークなテイスティングタイトルは、どのように決めていますか?

30~40人のテイスティングパネラーが「ザ・ボルツ」に集まって、そこで彼らが試飲して決めています。それぞれが書いたテイスティングコメントをもとに、みんなで話し合いをしています。

―ウイスキー以外にも、ジン、ラム、ブランデーと展開されていますよね。ほかに注目しているお酒はありますか?

ウイスキー以外のスピリッツをボトリングしたのは、メンバーにコニサーがいらしたことがきっかけです。彼らに情報を頂いて、特別なスピリッツをご提供することができました。基本的にはウイスキーがメインですし、これ以上カテゴリを増やすかどうかはわかりません。

―注目しているエリアは?

ソサエティの本部が35周年、日本では25周年を迎えました。日本は、我々の活動を長年理解してくださっている大事な国です。アメリカはウイスキーマーケットとして規模が大きいので注目していますし、スカンジナビアの方々はシングルカスクが大好きで、中国は急成長しています。その中でも、日本は一番長くお付き合いをさせて頂いています。

―ソサエティの強みについて、今後の展開や夢を教えてください。

ソサエティを一言で表現するならば、“All together unique”。ほかのどこにもないような、ユニークなところが素晴らしいと感じています。テイスティングパネラーが最高に美味しいものを紹介していること、世界中に3万人ものメンバーがいて、ウイスキーラバー同士が交流を持つことができる会員制という点が強みですね。ボトルを販売するだけで、終わりではないんです。ほとんど毎晩、テイスティング、セミナー、新商品ローンチパーティなど世界中のどこかでソサエティのイベントが開催されています。さらにメンバーを増やして、皆さんと一緒に乾杯したいですね。

インタビュー後、定員8名という内容の濃い親睦会が行われました。「ザ ソサエティ」のバーマネジャー、南木浩史さんからハイボールが振舞われ、乾杯! ベースはもちろんソサエティのボトル、ロングモーン11年です。

ポールさんによるとソサエティは昨年35周年を迎え、40もの蒸留所をパーティへ招待したそうで、創設者のピップ・ヒルズさんも出席されていたとか。シングルカスクのウイスキーが大好きなピップさんは、数人の友人たちとスポーツカーに乗って蒸留所をまわり、1983年に初めて樽を購入しました。

それが、蒸留所コード1番。そう、ソサエティのウイスキーは蒸留所名の記載がなく、蒸留所コードと樽番号、アルコール度数、蒸留と瓶詰年月、熟成年といった情報のみが表示されているのが特徴で、先入観にとらわれずにウイスキーを味わってほしいという思いが表れています。蒸留所コードは、購入した順番に付いています。

ハイボールを飲み終わる頃、アミューズに「クリームチーズとキャビアのシュークリーム」が供され、参加者のひとりがサプライズで持参したオーヘントッシャンが配られました。2002年6月に入手されたというソサエティのボトル(61%)です。初めてこの度数に出会うと驚きますが、ソサエティのウイスキーはシングルカスク(ブレンドしない)、樽出し(加水しない)、ノンチルフィルター(冷却ろ過しない)を貫いているのです。

今回のメンバー限定親睦会は、30種類以上のソサエティボトルが飲み放題。「フワフワのスリッパで松林を抜ける」「セイレーンとの遭遇」「アヒルの背に乗ってエトナ火山を登る」「ダークサイドへの誘惑」「空も飛べる」など、気になるテイスティングタイトルばかりでした。

「その国ごとに、人気のあるフレーバーはありますか?」「今後、日本のウイスキーをボトリングする予定は?」といった質問から、ポールさんが挑戦しているウルトラマラソンの話まで、約2時間の懇親会は最後まで盛り上がりました。

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