2017年11月に行われたゴードン&マクファイル社のリチャード・

リチャード・アーカート氏(写真右)
(G&M社 インターナショナルセールスマネージャー(アジア&アメリカ)<
デビッド・キング氏(写真左)
(G&M社 インターナショナルセールスダイレクター<国際営業部長>)
インタビュアー:酒育の会代表 谷嶋(写真中央)
谷嶋「今回はお忙しい中お時間を頂戴し、ありがとうございます」
①ゴードン&マクファイル社(以下GM)について
谷嶋「まず、ボトラーズとして最も大きな仕事とは何でしょうか」
リチャード氏(以下GM)「自社で用意したスペインからのシェリーカスク、アメリカからのバーボンカスクといった空樽と、自分たちが選んだウイスキー各々の個性を合わせて熟成を進めていくことが最も大きな仕事になります」
谷嶋「原酒はどのように調達されますか? ニューポット、または熟成中の樽でしょうか」
GM「空樽を蒸留所に持ち込んで、ニューポットを詰めて頂きます。ウイスキーの品質をよく確認して、ゴードン&マクファイルらしい熟成を進めることに意義を感じていますので、基本的には熟成されたものを購入することはありません。ただ、滅多にないことですが、蒸留所との間で欲しい樽やビンテージを交換することはあります。品質第一ですので、ゴードン&マクファイルに見合うものであれば稀にですが」
谷嶋「本社に熟成庫をお持ちですが、蒸留所にも樽を預けてらっしゃいますよね。熟成方法についての考えをお聞かせください」
GM「ボトリングの直前、およそ1年前に樽を持ってきますので、自社の熟成庫にある樽はすぐにボトリングするものです。ウイスキーは造られた場所、蒸留所で熟成されるのがベストだと考えていますので、ニューポットを詰めた後はそのまま蒸留所で熟成させます。ただ、最近はどの蒸留所も熟成庫のスペースに余裕がなく、断られる場合もあります。その際は自社の熟成庫だったり、ほかの場所を探します」

谷嶋「ディスティラリー・ボトルとの違い、差別化はどのようにされていますか?」
GM「弊社にはモートラック15年などがありますが、いかに長く同じ品質を保ちながらリリースできるかに注力しています。蒸留所元詰めのボトルに対して、我々は樽とウイスキーとの相性を最大に引き出しながらリリースを続けることを重視しています。真っ向から競合するのではなく、選択肢のひとつとしてそこに居続けているのです」
谷嶋「年数を変えたりとか、そういった工夫をされているのかと」
GM「我々はゴードン&マクファイルというブランドがあるだけで、すべてのウイスキーはその蒸留所が持っているものです。ですから、ディスティラリー・ボトルよりも良いものを造ろうなどとは考えていません。あくまでもゴードン&マクファイルイズムを出しながら、熟成を進めています。蒸留所に敬意を払うという姿勢が大事だと思います」
谷嶋「他社はブレンデッドを扱うところが多いですが、ずっとモルトメインなのはどうしてでしょう?」
GM「明確な理由は社内でもわかっていません。エルギンという町がスペイサイドの中心にあって、すべての蒸留所の出張所があのビルに入っていることもありますし、市場がなくても私の祖父や曾祖父はそこに強い可能性を感じたのではないでしょうか。その恩恵を受けて、弊社が成長したと言えます」
谷嶋「私が初めてモルトウイスキーを飲んだのは、30年くらい前でしょうか。御社のコニサーズチョイスやカスクストレングスシリーズ、グレンリベットのライオンラベルといったものが身近でした。むしろ、当時はモルトといえばゴードン&マクファイルしかないほどでしたね。ところで、いろいろなレンジで出されていますが、カスクストレングスにするか加水して商品にするかはどのように選ばれていますか?」
GM「最もコアなレンジとなっているのが蒸留所ラベルで、1896年にこのスタイルでボトリングを始めました。1895年創業ですので、翌年には蒸留所から許可を得たことになります。100年以上このシリーズでボトリングしていますので、数が少なくなってきてはいますが続けていきたいですね。一方で、ウイスキーは造っているもののボトリング施設がなかったり、蒸留所ラベルのようにラベルを提供できないといったブランドのためにコニサーズチョイスが誕生しました。これは初めて自社がデザインしたラベルで、さらに強くGMブランドーシングルモルトのボトラーーということを打ち出すことができましたね。それまで世に出てこなかったウイスキーが日の目を見ると同時に、“このウイスキーは誰が出したのか”という注目を集められたことは大きかったです」
谷嶋「確かにいろいろな蒸留所のウイスキーを飲もうという時は、コニサーズチョイスでしたね」
GM「現在、弊社がボトリングしている蒸留所は103か所です。蒸留所ラベルとコニサーズチョイスの2大シリーズが主要商品となっていますが、市場のトレンドとして少量生産、限定数、度数が高いものが好まれる傾向にあります。2大シリーズを脅かさない程度にバランスを考えて、テイスティングしたときに混ぜるのはもったいないと感じたものに関してはカスクストレングスで出しています。今後、増やしていきたいと思っています」

②ベンローマック蒸留所について
谷嶋「1993年に買収されましたが、どうしてこの時期に蒸留所を始めたのですか? 原酒不足の今のような時期ならわかるのですが」
GM「初めて蒸留所を買おうとしたのが1950年、という記録が残っています。ということは、恐らくその前から気持ちはあったのでしょう。当時はストラスアイラを買いたかったようですが、シーバスブラザーズに持っていかれてしまいました。ずっと考えていたけれど、実際に買収できたのがたまたま1993年だったということです。1983年の閉鎖ラッシュ後に市場の動きがあって、1993年に蒸留所が売りに出されるようになった際にチャンスをものにしたというわけです。当時、ウイスキーの人気がここまで爆発的になるとは思ってもいませんでした。ボトラーズというだけでなく、生産者というもうひとつの顔を手に入れられたのは良かったですね」
谷嶋「いま、ほかの蒸留所の樽を買うのはとても難しいという声を聞きます。樽を入手するために、ベンローマックと蒸留所の樽と交換することはありますか?」
GM「ベンローマックをボトラーズに出すことはありません。また、ゴードン&マクファイルがボトラーズとしてベンローマックをリリースすることもないですね。生産量も少ないですし、GM含めたボトラーズに出すことはないです。将来的に大量生産できるようになれば、わかりませんが」
谷嶋「凄いことですね。やはり歴史があるからでしょうか。そうでなければ、なかなか良い樽が入手できないですから」
GM「生産をすべて自社で管理できることは、強みですね。良いものを出し続けていきたいので、売ろうという気にはなりません」
谷嶋「ベンローマックの個性、目指す酒質はどのようなものですか?」
GM「クラシックなスペイサイドモルトを目指しています。人の手で丁寧に造っていますし、生産量もそれほど拡大できません。1年に何ケース売るかといった数字ではなく、良いウイスキーをどのようにお届けしていくかを重視しています。いまノンエイジが増えていますが、エイジングをしっかり表記したわかりやすい商品をリリースしていきたいですね。ベンローマック蒸留所は1898年に稼働、100年後の1998年に弊社が再稼働しました。来年はそれから20年が経ちますので、98年にチャールズ皇太子にサインして頂いたファーストカスクをリリースします。どれほど価値があるものか理解していますし、大変売れるとは思いますがあくまでもチャリティにまわす予定です。そういったことからも、長年家族で経営してきた自負がお分かりいただけるのではないでしょうか」
谷嶋「スペイサイドのグレンファークラス蒸留所を訪れたときにも、やはり家族経営は違うなと感じました」
GM「売上だけを考えれば良いわけではなく、次世代に繋がなければなりません。世代交代がありますので、ビジネスをより強固にすることが大前提です」
谷嶋「なるほど。ところで、オーガニックに取り組んだきっかけを教えてください」
GM「買収した翌年、1999年に私の叔父が考えたアイデアです。恐らくどの分野においても、世間のトレンドとしてオーガニックがシェアを拡大していくだろうと。そこで、オーガニックでウイスキーを造れないかということになりました。英国土壌協会によると、生産工程のすべてにおいてウイスキーに触れたものがオーガニックであることを証明しなくてはなりません。つまり熟成に使用する樽もなので、ミズーリでオーガニックの樫の木を育てている人に交渉しました。それから木材をスペイサイドのクーパレッジに運んで新樽を組み直し、そのバージンオークにオーガニック麦芽で造ったウイスキーを入れてようやく認められたのです。小さな蒸留所なので大量生産はできませんが、比較的いろいろなアイデアを試すことができる環境に恵まれています。ピートスモークや3回蒸留のトリプル・ディスティルドもそうですね」
谷嶋「バージンオークを払い出した後は、通常のセカンドフィルとして使われますか?」
GM「そうですね、ベンローマックやゴードン&マクファイルで使います。オーガニックウイスキーのみを入れていれば、そのままオーガニック用に使えますが、5~6年使用するとバージンオークの効果がだいぶ薄れてしまいますので」
谷嶋「オーガニックウイスキーの難しい点は、そのあたりですよね」
GM「樽を探すのが一番大変ですね。他社からオーガニック風ウイスキーが出ていますが、恐らくすべての生産工程において英国土壌協会から認められたのは弊社だけです。オーガニック麦芽は比較的容易いのですが、樽を見つけるのが難しいので」

③リチャード・アーカート氏について
谷嶋「最後にファミリービジネスについてお聞きしたいのですが、まずどのように会社に携わったのか教えてください」
GM「基本的に何をしても良いと言われていました。自分の好きなことをして経験を積んで、最終的にどうすればいいか決めればいいと。でも、もともと家業を継ぎたいと考えていましたので、マーケティングやITなど家に戻ってきたときに役立つようなことを勉強していました。ITに関しては、まだ弊社には早いですけどね。後継者として戻ってきた場合、社内の全部署をインターンのような形でまわることになっていまして、ベンローマックでウイスキーを造ったり、国内営業を担当したりしながら全体の流れを肌で感じました。そして今は、専任で海外担当ということになっています。そのおかげで、世界中を訪れることができて楽しいですね」
谷嶋「今回も、アジアツアーですよね」
GM「2週間かけて香港、ベトナム、日本、中国、台湾をまわります。お客様と直接お会いできますし、素晴らしいイベントにも参加できて嬉しいですね。スコットランドでお会いして、再会できたり」
谷嶋「その節は、ありがとうございました。ところで、お好みのウイスキーはどのようなものですか?」
GM「その時どこにいるか、自分がどのような状況かにもよりますが、グレングラントの1961が好きですね。シェリーが前面に出ているものよりはバーボン樽のほうが好みで、ベンローマックだったら15年。8年熟成でも50年熟成でも同じ理念でボトリングしていますので、長熟だから良いとか、若くて安いから良いという観念では選びません」
谷嶋「日本のウイスキーマーケット、ウイスキーラバーズについてはどう感じられますか?」
GM「情熱的であることはもちろん、とても知識がありますよね。昨日のイベントでの若い人や女性の多さに、『これが未来だな』と感じました。感銘を受ける質問が多く、より深くウイスキーを知ろうという姿勢が見られました」
谷嶋「明日には日本を発たれますよね。またお会いしましょう。本日はありがとうございました」


