今回のペアリング
「カツオの出汁醤油漬け リコッタチーズといぶりがっこを忍ばせて」
×
「長野県産ルバーブとラベンダーのコスモポリタン」
強い日差しを浴びた後、さっぱりとしたものが飲みたくなる季節が今年もやってきました。そんな暑い日差しの中、BARでの一杯目は少し酸味の効いたさっぱりとしたカクテルが飲みたくなります。そこで今回は、酸に注目をしたペアリングをご紹介させていただきたいと思います。
カクテルにおいての「酸」は、リンゴ酸、乳酸、酒石酸が代表的ではないでしょうか? ただ、近年のカクテル業界では「酢酸」を主成分とするヴィネガーを使った自家製のシュラブや、「グルタミン酸」「イノシン酸」「コハク酸」などを副材料として使うことも多くなってきました。
それぞれの「酸」に合うものは、一体何でしょうか?
「グルタミン酸(昆布)」と「イノシン酸(鰹節)」で作る出汁は旨味の相乗効果で美味しくなることはご存知の方も多いと思います。そういった酸同士の組み合わせによって相乗効果が生じることも多々あります。
合わせにくい例を挙げますと、甘みの強いチョコレートやデザート系の場合、酸は苦味を生じたり、強く反応してしまう可能性があります。厳密に言えばチョコレートの場合、焙煎度の低い物であればレモンやラズベリー、コリアンダーなどの香りや味わいを感じるものもありますので、ここにリンゴ酸系や乳酸系などを感じさせるものを入れたガナッシュを組み合わせることで、合わせられるかもしれません。
しかし今回は、通常手に入る身近なもので考えてみることにしたいと思います。
以前ある専門誌にご提案をさせていただいた「リンゴ酸」と「乳酸」の組み合わせがあります。これはワインの製造工程の一つである「マロラクティック発酵」からヒントを得たものです。前回でもお話をいたしました製造工程からのペアリングの考え方です。
それを踏まえてご紹介をさせていただく今回のペアリングは、
「カツオの出汁醤油漬け リコッタチーズといぶりがっこを忍ばせて」×「長野県産ルバーブとラベンダーのコスモポリタン」
です。
効果
リコッタチーズの乳酸は、リンゴ酸などが強いルバーブの酸味を柔らかくしてくれます。カツオや牡蠣醤油のもつアミノ酸やイノシン酸がラベンダーの香気と反応し合います。最後に忍ばせておいた、いぶりがっことリコッタチーズがドン・フリオ レポサドの樽由来の深みと乳酸の香りを余韻として長く感じさせる効果をもたらしてくれます。一覧にすると
カツオ(イノシン酸) = ドン・フリオ レポサドの深み
リコッタチーズ = ルバーブ(リンゴ酸・ビタミンC)
牡蠣醤油 = ラベンダーの持つシソ科の香り
いぶりがっこ = ドン・フリオの樽香
という形です。
料理だけでも完成している「酸」の組み合わせですが、ここにカクテルが加わることによってより相乗効果を楽しむことのできるペアリングです。
まとめ
今回のような、食材から感じ取ることのできる様々な「酸」との組み合わせを考えて行くペアリングでは、それぞれの味わいの変化や、繋げることによって生まれる相乗効果を感じることができます。ペアリングの楽しさを最も感じられる組み合わせのひとつといえます。
☆レシピ
「カツオの牡蠣醬油漬け リコッタチーズといぶりがっこを忍ばせて」(5人前)
カツオ 10枚
牡蠣醤油 100ml
水 100ml
いぶりがっこ 20g
リコッタチーズ 30g
クラッカー 10枚
山椒 少量
作り方
① 牡蠣醤油と水をあわせたものにカツオを一晩漬け込み、5mm角に切る。
② リコッタチーズと1mm角のダイス状にしたいぶりがっこを混ぜ合わせる。
③ ①、②をクラッカーにのせて、最後に山椒を振る。
「長野県産ルバーブとラベンダーのコスモポリタン」
ドン・フリオ レポサド 30ml
ルバーブ・ジャム(*) 20ml
ラベンダー・ティー 10ml
グレープフルーツ・ジュース 30ml
コアントロー 1tsp
グレナデンシロップ 1tsp
技法 :シェイク
グラス :カクテルグラス
(*) ルバーブ・ジャム
ルバーブ 500g
グラニュー糖 150g
水 500ml〜800ml(ルバーブがしっかりと浸るくらいの量)
作り方
①ルバーブの両端をカットして、3cm幅にカットする。
②水を張った鍋に①を入れて、とろとろになるまで煮込む。
③ルバーブの繊維が解けてきたら、砂糖を入れてジャム状に煮詰めていく。