2018年6月7日、アサヒビール株式会社主催にて、スコットランドのシングルモルトウイスキー『グレンゴイン』のブランドセミナーが行われました。講師は、2013年にウイスキー業界に多大な貢献をしている人物に贈られる「Keeper of the Quaich(キーパー・オブ・ザ・クエイヒ)」に選ばれ、2017年からイアン・マックロード社でブランドアンバサダーとして活躍されているゴードン・ダンダス氏でした。
グレンゴイン(GLENGOYNE)蒸溜所は、1833年にグラスゴーの北20キロに設立されました。「ゴイン」の意味はワイルド・ギース(野生の雁)で、ラベルにも描かれています。道を挟んで、蒸溜施設はハイランド、熟成庫はローランドになりますが、これは税金対策だったとも言われています。年間生産量は100万リットル程度で、マッカラン蒸溜所が1400万リットルなのと比べても、小規模蒸溜所であることがわかります。年間9万人が見学に訪れています。
現在のオーナーは2003年に買収したイアン・マックロード社で、その後タムデュー蒸溜所、ローズバンク蒸溜所も傘下に収めています。現在、マネージング・ディレクターはレオナルド・ラッセル氏が務めており、「ウイスキー造りに真摯である」「華麗に美しく非効率的であれ」をモットーにしています。
グレンゴインのウイスキー造りには6つの信条があります。
①ノンピートモルトを使用する
②ゆっくりとした蒸溜
③伝統的なダンネージ式での熟成
④オロロソ・シェリー樽主体
⑤ナチュラル・カラー
⑥ハンドクラフト、伝統を重んじる
まず、原料であるモルトはシンプソン社(モルトスター・製麦業者)から入手しており、ノンピート麦芽のみです。これは樽のポテンシャルを最大限に引き出すためで、ピート香がフルーティーなアロマなどをマスキングしてしまうからです。
発酵槽は伝統的なオレゴン・パイン製です。
蒸溜釜は3基あり、1基の初溜釜から得られた初溜液を、2基の再溜釜に移すシステムとなっています。形状はほんのり膨らんだバルジ型で、ラインアームはやや下向きになっています。釜のサイズは、初溜釜が16000リットル(張り込み量12666リットル)、再溜釜は5000リットル(張り込み量3800リットル)です。加熱は78℃で、蒸溜スピードは5リットル/分(通常の蒸溜所では10~15リットル/分)とゆっくり蒸溜をし、銅との接触時間を長くしています。再溜液のアルコール度数は69%で、63.5%まで加水してから樽に詰めます。
熟成庫は伝統的なダンネージ式で、3段までしか積みません。
シェリー樽については、材をスペイン北部とアメリカ・アパラチア地方から樹齢70年以上のものを入手しています。年輪の細かいものを選び製材し、天日干しを3年施し、製樽、2年半から3年間オロロソシェリートリートメントを行います。その後、樽のまま蒸溜所へ運びます。ちなみに、入れられていたシェリーはビネガーや蒸溜してスピリッツにされます。現在、シェリー樽は1500ポンド(約23万円)程度します。製樽はエドリントン時代と同じタバサ・クーパレッジにて行っており、3サイズ(ホグスヘッド250リットル・パンチョン450リットル・バット500リットル)をヨーロピアンオークとアメリカンホワイトオークの両方で作っています。オロロソ以外のシェリーでトリートメントした樽は使用していません。
バーボン樽も使用していますが、これはヘブンヒルやジャックダニエルから入手しています。
続いてテイスティング。今回は日本で販売されている10年と21年のほかに、12年と15年もご用意していただきました。
①グレンゴイン10年 43%
- ファーストフィル・ヨーロピアンシェリー樽 15%
- ファーストフィル・アメリカンシェリー樽 15%
- レフィル樽 70%
香りはシェリー樽由来のアロマのほかに、青リンゴや洋ナシの爽やかな印象。味わいはスムースでバランスがよく、麦芽や果実の甘味が感じられます。
②グレンゴイン12年 43%
- ファーストフィル・ヨーロピアンシェリー樽 20%
- ファーストフィル・アメリカンバーボン樽 20%
- レフィル樽 60%
香りはココナッツや蜂蜜、爽やかな柑橘が感じられます。味わいはリンゴやシナモン、ジンジャーなど、バーボン樽とシェリー樽のバランスが良い仕上がりになっています。
③グレンゴイン15年 43%
- ファーストフィル・アメリカンバーボン樽 30%
- ファーストフィル・ヨーロピアンシェリー樽 20%
- レフィル樽 50%
香りはクリーミーで、パインなどトロピカルに。味わいもフルーティーでリンゴやバナナ・メロン・パインなど、よりバランスの良い仕上がりになっています。
④グレンゴイン21年 43%
- ファーストフィル・ヨーロピアンシェリー樽 100%
香りはレーズンやリコリス、なめし皮。味わいはドライフルーツやハチミツ、スパイスなど、まろやかなシェリー樽のニュアンスを楽しめます。「お祝いの酒」に。